定年後のショックを和らげるには、なるべく定年まえから、定年後にはなくなるとわかっている特権などを、あまり使わない生活を送るようにするというのも、ひとつの方法かもしれません。
私の兄も、現役のうちから、なるべく特権には頼らない生活を工夫するようにして、定年後との落差を縮めるようにしていたからでしようか、定年を迎えてがっくりするどころか、ほかの人がびっくりするほど、いまでも元気に活躍しています。
さまざまな特権、権限を失うショックを和らげる方法には、ほかにもいろいろあります。
これは一種の心理操作なのですが、定年後の生活が一変したときに、「特権、権限がなくなった」のではなく、自分から「特権、権限を捨てたのだ」と思うことです。
ベトナム戦争中、前線で負傷して手術で片足を失った兵士を、「すべては順調です。
が、たったひとつだけ、キミの片足がなくなったのは残念なことだった」と、医師がなぐさめようとしたところ、その兵士は、「いや、違います。
私の片足はなくなったのではなく、私が命とひきかえに捨てたのです」と答えたというエピソードがあります。
「なくなった」を、「捨てた」といいかえることで、つらい事実を落胆せずに受け止めようという心理操作です。
定年でさまざまな権限を失う場合も、これと同様に考えてみてはどうでしょう。
「失った」のではなく、「捨てた」と思うのです。
そう思うことで、その後の人生を生き抜く気力は大きく違ってくるでしょう。