ちょっとしたきっかけがあって、私は、狩猟の免許を千葉大助教授の時代に取得しました。
とはいうものの、このときはまだ40代だったので、仕事にもいちばんあぶらが乗っているときで忙しく、狩猟をやる時間などは、とうていさけそうにもありませんでした。
しかし、いずれ暇ができたときにはぜひやってみたいと考え、とりあえず狩猟免許だけは取得しておいたのです。
・いざ狩猟免許を取ってみると、さらに欲が出てきて今度は、いずれ時間ができたときにはモーターボートにも乗って楽しみたいと希望が広がり、結局、モーターボートの免許も取ってしまいました。
仕事に関することでも、仕事と無関係なことでも、何かやりたいことがあるのですが、いまは、時間的にも経済的にも無理だというとき、仕方ないとあきらめたり、忘れ去ったりしてはいないでしょうか。
こんなときこそ、自分の定年後のことを、ちらとでも思い起こせば、あきらめたり、忘れ去ったりするのが、いかにもったいないことかがわかるでしょう。
定年後の生活の意味づけには、いろいろな考え方があるでしょうが、私は、その最大のもののひとつが、「やりたくてもできなかったことが、存分にできる時期」だと思っています。
ですから、現役時代から、いまはまだ時間的に余裕がないけれど、将来はぜひやりたいと思うことができたら、そう思うたびに、すこしずつでも貯金していってはどうでしょうか。
けっして、どうせ無理だからとあきらめたり、忘れ去ったりしないようにするのです。
現在の仕事に打ち込んでいればいるほど、あれもやってみたい、これもやってみたいという欲求がたくさん出てきて当然なのです。
そういうものを、思いつくたびに貯金していけば、いざ定年になったときは、やりたいことの貯金ではち切れそうになっているに違いありません。
ただ、この貯金の仕方には、上手下手があります。
いずれこのことはやりたいと、心の通帳にメモしておくだけでも、貯金は貯金なのですが、どうせなら貯金の入金は大きいほど、おろすときの効果も大きいはずです。
貯金の入金を大きくするためには、ひとつには、いまはできないことでも、すこしくらいはかじってツバをつけておくことです。
若いうちからやりたいことに手をつけておいたほうが、能力的にも定年を過ぎてから手をつけるよりは、数段ラクにはいっていくことができるというプラスの面もあります。
何かきっかけがあり、やりたいことができたら、まず手をつけられるところだけ、手をつけておくのです。
そうすれば、定年まえにはじめるチャンスが到来したときでも、即座にとりかかれます。
たとえそういったチャンスにめぐまれる機会がなく、定年を迎えてしまっても、この貯金さえあれば、それを誘導路にしてただちに、目的のものの本線にまっすぐに進むことができます。
まずはとっかかりとして、やりたいことを先延ばしにするだけでなく、ツバだけはつけておくことがたいせつなのです。