どんな地域でも、かならず町内会の世話役的なお年寄りがいます。
こうしたお年寄りは年をとってもボケることなく、カクシャクとして地域活動を続けていることが多いように思います。
商店街のご隠居さんなどで、ふつうのサラリーマンの定年退職者だったら、とっくに老け込んでもおかしくないはずの年齢のお年寄りなのに、いつもシャンとして、やれ町内の行事だとか祭りだとかいって走り回っている姿を、誰でも一度は見かけたことがあるでしょう。
こうして町内会の世話役たちが、商売や資産を息子にすっかり譲ってしまい、現役から引退しても、老け込むことなくいつまでもピンピンと元気でいられるのはなぜでしょうか。
それはひとつに、彼らが現役時代から、地元のコミュニティーと強い結びつきを持って活動しているからでしょう。
彼らは地域のなかに、仲のいい友人もいれば、相談に乗ってやるべき後輩もいるライバルの商店のオヤジもいるといった調子で、地域にしっかりと根を張って生きています。
彼らはこうした人間関係のなかで、人から必要とされることによって、心身ともに健康を保っているのです。
この点、サラリーマンの場合はどうでしょう。
サラリーマンはすでに現役時代から、地元地域との結びつきが弱く、地元のコミュニティーとはきわめて疎遠な関係にあります。
祭りの寄付などといわれれば、しぶしぶお金は出すでしょうが、体を動かすことはしないでしょうし、町内会の会合だなどといわれても、まったくわれ関せずとばかり、そ知らぬ顔という人がほとんどでしょう。
ひどい人になると、両隣の亭主の顔すら知らないといった調子です。
こういうサラリーマンは、いざ定年退職となっても、ひまな一日、家のなかで時間をツブすしかなく、結局は家のなかで老け込んでいくだけということになるのです。
定年退職後に、自分を温かく迎えてくれる人間関係を、いまのうちからつくっておくにこしたことはありません。
そのためには、地域との関係をおろそかにしないことです。
たとえ、すこしぐらい忙しくても、地域の会合や町内会などには、おっくうがらずにこまめに顔を出し、地域の人々と顔をつないでおいたほうがいいでしょう。
ふだんから地域活動に無関心だった人間が、いざ、定年となってから「お仲間に入れてください」といっても、おいそれとうまくはいかないものです。
子どもの小・中学校でのPTA活動なども、おおいに利用できます。
とくに公立の小・中学校での親同士の人間関係は、そのまま地域の人間関係につながっているからです。
PTAの会合をいつも妻まかせにせず、たまには自分から積極的に顔を出してみてはどうでしょう。
さまざまな地域の人たちと顔をつなぐ、いいきっかけとなるはずです。
こうした人間関係が、定年後の人生をハリのある、楽しいものにしてくれる可能性が高いのです。