女流小説家、および思想家として人間の性を追求したボーボワールは、紳士録に名まえの出ている65歳以上の男性のうち、七割が月平均、四回も性交を行っていると述べ、周囲を驚かせたことがあります。
驚かせたのは、いうまでもなく、当時のフランスの社会通念では、60歳以上の老人が月平均、四回も性交を行うなどということは、ありえないとされていたからです。
しかし、実際には、社会の第一線で活躍している人は、60代後半になっても、心身ともに若々しくあり続けているのです。
結婚や離婚問題で、しばしばマスコミを騒がせた歌手の五月みどりさんの座右は、「生涯青春」だそうです。
じつにいい言葉だと思います。
彼女は新聞のインタビューに、「いつまでも若々しく、まえ向きでいたいんです。
気持ちの問題なんですね」と語っていましたが、まさにそのとおりです。
古い社会常識にしばられることなく、「自分は若い」といいきかせ続けることができれば、誰でも生涯青春が味わえるのです。
以前、福岡で放映されていた朝番組のテレビリポートに、長尾トリさんという、70歳を越えて活躍している女性がいらしたそうです。
もともとは博多の旅館のおかみさんだというトリさんは、夫を亡くした哀しみから、一日も早く立ちなおって、ハリのある生活を取り戻したいということで、このリポート業をひきうけたといいます。
いまでは、ほとんど聞かれなくなった正調博多弁で、これまでの自分の経験をおり込んだリポートをしていたそうです。
その説得力のあるリポートぶりや、さすがに旅館のおかみさんらしく、きちんと着こなした着物姿に、局にはファンレターまで舞い込む人気だったということです。
世界的な名ピアニストとして知られたルビンシュタインが、モーツァルトのピアノ協奏曲のレコードを出しはじめたのは、彼が70歳を過ぎてからのことだそうです。
「私も70歳になったから、そろそろモーツァルトの協奏曲を弾いてもよかろう」と、彼は語っています。
高齢になってから、新しい生きがい、新しい仕事を見っけ、それに没頭して人生を豊かにする人が少なくありません。
50の手習いなどという言葉がありますが、人生、新しいことをはじめるのに、年齢制限はありません。
明日の自分は、今日の自分よりさらに進歩したいと思い、進歩していると信じられる人は、どんなに年をとっても、新しい希望、新しい生きがいをつかむことができるのです。