ある体操の先生は、中高年を相手にした講演会で、「荷物はそのままでいいですから、みなさん立ち上がってください」というテストをよくされています。
そして、そのあとに、「ハイ、そこまで」と声をかけ、「いま、いわれてすぐ立ち上がった人は老化していません」とやるのです。
この場合の老化とは、体力だけでなく、精神的なものも含まれているのでしょう。
精神的に衰えてくると、消極的になっていて、「やれやれ、面倒くさいなあ」などと考えたり、「なぜ立たなければいけないのだろう」と、理由を詮索してしまい、つい、動作がワンテンポ遅れてしまいがちです。
慎重すぎたり、必要以上にくよくよ考え込んだりして積極的になれない、あるいは、肉体的エネルギー不足で、何ごとにつけ面倒くささが先に立つ、そういう人たちは、日常の行動にもこうした動作の遅れが目立つものです。
電話をとるとき、人に名まえを呼ばれたとき、上役に何かをいいつけられたとき、体がすぐに動かないとしたら気をつけたほうがいいでしょう。
そうならないためには、ふだんから何ごとにつけ、大きな動作をするよう心がけてみることです。
たとえば、人に呼ばれたなら、顔だけでなく体ごと相手のほうに向くとか、立ち上がって大きな声で返事をしてみるのです。
人と話をするときにも、両手でゼスチャーをまじえながら話してみてはどうでしょう。
そうしたオーバーアクションをすこしずつでもやっていくうちに、肉体的なエネルギーもしだいに高まり、それが精神的なエネルギーにも作用し、いざというときにすぐさま体を動かす気力が生まれてくるのです。
街を歩いていると、ショーウインドーに映った自分の姿を見て、身だしなみを整える若者をよく見かけるようになりました。
駅の鏡をのぞき込む男性の数も、ひところにくらべて、ずいぶんふえたように思います。
現代の若者たちは、人まえで鏡を見ることに、なんの抵抗感も持っていないようです。
反対に、デパートのスーツ売り場などで、試着した自分の姿を恥ずかしそうに鏡に映している男性もよく見かけますが、それはたいがい中高年です。
俗に、「鏡は心を映し出す」といわれます。
自分のそのときの気分が表情や姿勢に表れ、それを鏡が示してくれるからです。
そして鏡に映った表情や姿勢は、周囲の人たちの目にも同じように映し出されています。
つまり、鏡に映った自分の姿は、まったく客観的な目で眺めることができるのです。