はじめてはいったバーで、予想外の料金を請求されたとき、「法外な金額だ!」と烈火のごとく怒り、その迫力でとうとう値引きをさせたという、ある経営者の話を聞いたことがあります。
それで味をしめた彼は、また別の店にはいり、値引き交渉をはじめました。
しかし、今度の店では相手もなかなかしぶとく、ガンとして値引きに応じようとしません。
そうこうしているうちに、彼以上に迫力がありそうな、怖い顔をしたお兄さんたちが出てきました。
そこで、「ちょっとまずいな」と考え、自分の身を案じて仕方なく引き下がったのだそうです。
ここまではなかなかできない武勇伝ですが、はじめてはいる店で起こるハプニングさえも、楽しんでしまおうと考える彼の積極性だけはおおいに見習いたいものです。
いつも行くなじみの店でなく、まったくはじめての店にはいるのは、誰でもちょっとした勇気がいるものです。
その店の構造もわからないし、客層や雰囲気もわかりません。
バーやスナックなど、料金にサービス料がつけ加えられるような店なら、いくら請求されるかという不安もあります。
とくにひとりの場合はなおさらで、結局、感じのよさそうな店だなと思っても、ついつい行きっけの店へと足が向いてしまいます。
ささいなことのようですが、こんなところにも、積極的な第二の人生のためのきっかけがあると、私には思えるのです。
新しいことにチャレンジしてみようといっても、なにもおおげさに考えることはないのです。
とりあえず、こんなところにも、手近なチャレンジを試みる場はあります。
思いきって新しい店の扉を開けてみれば、その店が好奇心と積極性を高めてくれる、無限の宝庫かもしれません。
行きっけの店では、気楽なかわりに、客層も固定し、話題もマンネリ化するので、新鮮な刺激とは縁遠くなって当たり前です。
知らないうちに情報に対して鈍感になり、自分がまだ知らないほかの情報を受け入れたり、比較したりすることも、できにくくなるかもしれません。
早い話、サービス業の変化は激しく、ちょっと目を離しているうちに、新しい商売のやり方がつぎつぎと登場してきます。
いまの自分の仕事が直接その商売に関係なく、マーケティング調査というほどおおげさなものではないとしても、いろんな情報に接することによって得るプラスは大きいはずです。
新しい店を一軒開拓しようとする、そんな身近なことのなかにも、心や頭、そしておそらく肉体も若々しくし、第二の人生を充実させる何かがあるでしょう。