これからの日本の男性は、定年後に四つの自立を求められるようになるといわれます。
これができていない人がけっこう多いのです。
そういわれても、この年でまだ自立できていないなどというバカなことはあるはずがない、と思う人がいるかもしれませんが、日本の社会では、ちゃんとした自立ができていなくても、それほど不自由を感じずに、生活できるしくみになっているのです。
この四つの自立とは、会社を代表とする組織からの自立、妻からの自立、子どもからの自立、そして最後が社会からの自立です。
私は、60歳という年齢は、このことを、自覚する時期でもあると思っています。
この自党がないと、実際に自立することも困難です。
学生時代は、学校のなかで先生のいうことや規則を守っていれば、しいて自分から行動を起こそうと考えなくてもつつがなく暮らすことができました。
会社にはいってからも、同様です。
上司からの命令を受けて、会社のために働く、いわゆる会社人間としての人生を送ってきた人が多いのです。
会社から離れて誰からも命令されず、好きなようにしていいといわれても、小さいころから組織人間、会社人間として生きてきた日本の男性たちは、24時間自由な生活を、どう過ごしていいかわからず、ただとまどってばかりということになりがちです。
それまで、もっぱらこうした会社人間として生きてきた人に向かって、退職したら、いきなり自立しろというのは無理というものでしょう。
会社で働いているときから、会社人間にならず、自立した人間であるためには「自分で仕事を選んでいる」という意識を持つことがたいせつです。
こう思えば、「やらなければならない」と思っているときよりも、仕事が楽しくできますし、何よりも、会社という組織に頼らず、自分自身で選んだ人生を送っているのだという自党が持てるはずです。
長年サラリーマンをやっている友人から聞いた話ですが、会社のなかでも、中小企業診断士とか、不動産鑑定士など、なんらかの資格を持っている人は、のびのび生きているように見えるといいます。
その気になれば自分で仕事を選べるという気持ちが、会社人間になっていない、自立した人間としての余裕をもたらしているのでしょう。