かつて、テレビ司会者の大橋巨泉さんが、レギュラー番組を降板して話題を呼びましたが、彼の人生のキャッチフレーズは、ひじょうにはっきりしています。
大きいことはいいことだという一世を風びしたコマーシャル風にいうなら、働くだけが能じゃない、遊ぶことはいいことだということです。
降板した二本の番組は、いずれも高視聴率の人気番組です。
なにも人気番組から、わざわざ降りなくてもいいのではないかと思われそうですが、大橋さんは記者会見の席上、「辞めたのは、まえまえから考えていたこと。
やりたいことをじっくりやるために、サラリーマンなら定年の55歳が、仕事のペースを落とす時期には最適」と、語っておられました。
もし、大橋さんが目先の視聴率競争だけにとらわれ、仕事に追われるばかりの日々を過ごしていたのなら、こうした高人気番組をいさぎよく降りるきっかけをつかむことはできなかったでしょう。
大橋さんは、仕事で忙しいさなか、まえまえから自分のライフスタイルを考えていたのです。
そして、「人生あと20年ぐらい。
本も読みたい。
見たいビデオもあります。
ゴルフもじっくり楽しみたい。
歴史の勉強もしたい。
そう考えると、このまま視聴率競争のなかで、お金を稼いで死ぬのは情けない」というのです。
定年後の人生を、より豊かに生きようと思ったら、この大橋さんのように、現役時代から会社や世間に流されず自分なりのライフスタイルを持ち、自分の人生のキャッチフレーズに忠実に生きていくことが、たいせつになってくるでしょう。
自分なりの人生のLIをつくりあげている人間は、定年後の生活をどうしようなどと、悩むことはまずないといっていいでしょう。
会社の発展のためにすばらしいCIを推進するのもいいでしょうが、自分の人生のLIのために、そのCIの手法を多少なりとも生かしてみたらどうでしょう。
自分のライフ・アイデンティティーができ、人生のキャッチフレーズが決まれば、現役時代も定年後も、分けへだてなく、そのLIなりキャッチフレーズの実現についやすことができるはずです。