一生のうちで、かりに22歳で就職し、60歳の定年まで働くとします。
すると、仕事のなかで昼食を何回とることになるでしょうか。
私が単純計算した数字では、約一万回にもなります。
じつに、これだけの昼食を仕事のなかでとるわけです。
昼休みはだいたい一時間ですから、時間にすると約一万時間にもなります。
私たちは、この時間をいったいどのように過ごしてきたでしょうか。
ビジネスマンの昼食は、ふつう社員食堂や近くの定食屋、喫茶店などですませることが多いでしょう。
「A定食」とか、「Bランチ、コーヒー付き」といった、いわゆるランチメニューをとるために、昼食の時刻になると、誰からともなく、「昼メシでも食べに行こうか」と誘い合って席を立ちます。
メンバーは同じ部署の隣や向かいに座っている同僚であることが多いでしょう。
なぜこんな話をするのかといいますと、昼食ひとつにも、考えるヒントがあると思うからです。
昼休みは、サラリーマン生活のなかで、自分だけの意志で使い道を好きなように決めることのできる時間です。
それを、わざわざ毎日ほぼ同じメンバーで、毎度おなじみの店に行き、食べ慣れたランチメニューをとっているのは、もったいないのではないでしょうか。
日替わり定食などといえば、おかずも毎日替わり、変化があって新鮮なように思えるかもしれません。
しかし、本人はただ出されたものを食べているだけですから、何も考える必要はなく、頭を使っているとはいいがたいのです。
しかも、メンバーが変わらないので、話題も仕事のこと、上司の悪日、ゴルフやプロ野球など、ほとんど決まってしまうでしょう。
要するに、職場がそのまま、昼食の場に移行してきてしまっているわけです。
悲しいことですが、これが日本の平均的なサラリーマンの姿なのではないでしょうか。
もし、こんなランチタイムを過ごしているとしたら、おおいに警戒したほうがいいでしょう。
ほかのいろいろな場面でも、これと同じように、自分でわざわざ交際範囲を狭めてしまい、それにともなって、関心の対象をかたよらせていることもあるかもしれません。
たまには、めったに食べないイタリア料理でも食べてみるとか、いつも同僚とばかり行かないで、上司や女子社員をさそってみるなど、小まめに行動のパターンを変えることで、いままでにない新鮮な話題や考え方、感覚にふれることもできるでしょう。
あるいは、通いなれた店の一本裏道にはいってみるなど、限られた時間枠内でも、好奇心を持って歩いてみれば、かならずや新しい発見に出会うことができるはずです。
昼休みの一時間でも、ちょっと意識するだけで、マンネリから離れた、積極的な生き方のきっかけづくりに生かせるのです。