世界一の長寿を誇っていた故泉重千代さんは、ジョークやユーモア精神に富んだ心の持ち主だったそうです。
ある噺家が、重千代さんと話したときのエピソードを雑誌で読んだことがありますが、「あなたはどんなタイプの女性が好きですか」とたずねられたとき、泉さんは「私はとても甘えん坊なので、年上の女性がいいですね」と答えられておりました。
日本人は、年をとり、社内でも課長や部長といった肩書きがつくようになってくると、へんにまじめになってしまう傾向があるようです。
会社の上司や同僚にも、ジョークをまったく理解しようとしない人がいますが、ジョークの役割は、周囲の雰囲気をなごやかにし、会話をはずませるだけではありません。
ジョークをいうには思考の柔軟性が必要ですから、頭をリフレッシュさせるいいトレーニングにもなります。
ジョークをいうためには、まず積極的に会話に参加することですが、アメリカ人は積極的に会話をつくり出し、相手を自分のペースに巻き込むのが得意です。
それに対して、日本人はおたがいに相手のペースに合わせようと、四苦八苦することがしばしばです。
友人と話をしていてフッと間があいたとき、つい、「困ったな、何を話したらいいんだろう」と迷い、相手の顔色をうかがってばかりいるという人がいます。
このような消極的な会話の進め方では、ジョークを生み出すゆとりも持てません。
年をとるにしたがって、自分を前面に押し出そうとする姿勢が、どうしても弱くなってきます。
そして、「こんな話をしても、この人にとってはすこしもおもしろくないだろうな」という不安感が、その消極性に輪をかけます。
そこでだんだん口ベタになり、会話が味気ないものになっていきます。
そうならないためには、相手のことをあまり気にしないで、とにかく自分から会話のスタートをきることです。
話がとぎれたら、どんなにたわいのないことでもいいですから、自分の感じたことを話してみるのです。
「そろそろ、入学シーズンですね」とひとこといえば、そこから子どもたちのこととか、自分たちの学生時代の体験など、話題がどんどん広がっていくかもしれません。
なにげない内容の話題でも、会話をするというのは、たいへん頭の刺激になるものです。
私の奇術の師である、アマチュア奇術の指導者高本重朗さんは、じつに多くの奇術レパートリーを持っておられます。
いっぽう、教えてもらう私たちのほうは、覚えようと何度も練習するのですが、先生とは同年代であるにもかかわらず、すぐに忘れてしまいがちです。
これは、自分ひとりで練習するのと、人に教えるのとでは、反復形式が違い、記憶の度合いにもかなり違いが出てくるからです。
会話についても、同じことがいえます。
覚えたことをそのままにしておくよりも、人に話したほうがいつまでも覚えていやすいのです。
しかも、こちらが話題を提供すれば、相手もいろいろと別の話題を提供してくれます。
こうして、話題はどんどんふえていき、会話の内容も豊かになっていきます。
相手を自分のペースに乗せ、会話を進めていくことによって、会話に対する消極性はしだいに打ち消されていきます。
そして、自分自身も会話が楽しめるばかりか、自分で話題をひっぱっていける積極的人間に変身できるでしょう。
服装に気をくばるだけでなく、会話にもおしゃれ心を持ってみてはどうでしょうか。